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研究内容STUDIES

レーザ弾性波源走査法による大型構造物の遠隔検査

配管や橋梁といった大型構造物の多くは,薄板状となっており,そのような薄板状材料にレーザパルスを照射すると,板を屈曲させる弾性波が発生します.その屈曲振動のエネルギは,レーザ照射位置の薄板の曲げ剛性に対応することが我々の過去の研究で明らかになりました.つまりレーザ照射位置を次々と変更しながら振動エネルギに対応する量を計測すると,曲げ剛性マップが得られます.通常,減肉などで弱くなった箇所では,振動エネルギが大きく得られる傾向にあり,曲げ剛性マップは損傷画像となります.レーザ照射は遠隔からでも可能ですので,例えば,プラント内の配管や高速道路の床板などの高所にあるような大型構造物を,足場など組まずに地面から検査できるようになると考えられます.この技術は,パイプのような曲面でも画像化が可能なので,将来的にはカメラのような操作で簡単に内部損傷が画像として取得できるようになることを期待し,我々は弾性波カメラと呼んでいます.



レーザ弾性波源走査法による接着構造の非破壊評価

上述の大型構造物に対する弾性波カメラ技術は非常に低い周波数でも利用でき,現在,数kHzのレンジで実験しています.計測上は,さらに高周波化することは容易で,それに伴い損傷の検出分解能も上昇します.このことは,小型の工業部品などへの展開が期待できることを示しており,初めに薄板間の接着構造の評価への適用を試みています.

半解析的有限要素法(SAFE)によるガイド波伝搬解析

ガイド波カメラで得られる損傷や接着領域の画像は,使用しているガイド波の波長に比べ,ずっと高分解能であることが実験的に得られていました.その原理を解析するために,半解析的有限要素法(Semi-analytical finite element method: SAFE)を用いた数値解析を行いました.SAFEは,2003年に林が発表して以降,ガイド波解析で欠かせない数値解析技術として広く利用されています.またガイド波検査に欠かせない分散曲線を算出するのに,SAFEを用いた計算ソフトウェアも開発し,販売しています(ソフトウェアに関するホームページは後日公開).

バルク波/ガイド波の周波数スペクトルに基づく接着接合部の特性評価

接着剤の高性能化に伴い,さまざまな構造に対する接着接合の適用が拡大する一方で,強度低下部に対する非破壊評価の実現が求められています.接着接合部に縦波や薄板を伝わるガイド波(ラム波)を入射すると,接着部での多重反射波の干渉によって特定の周波数で波の強め合い/弱め合いが生じることに着目し,この現象の理論的な解明に加えて,金属や複合材料の接着接合部に対する接着層/界面特性評価への応用に向けた研究を進めています.


拡散場を用いた新しい材料評価手法の検討

超音波を用いた工業材料の非破壊評価では,通常,パルス状の波形の反射波や透過波を利用します.また,対象物全体を揺らして共振周波数を解析することもあります.拡散場は,パルス状の波形が材料中を多重反射したのちの波動場のことで,これまで利用されてきた反射・透過波や共振とは異なるアプローチです.現在は,弾性波カメラの高感度化に役立つ技術として,拡散場を利用しています.

円筒構造におけるガイド波共振の解析

パイプの円周方向に溝をつけると,その部分に振動エネルギがトラップして,外に漏洩していかないという現象を発見しました.下図は,実験結果と数値計算による結果で,ある周波数の振動を溝部に与えることで,非常に大きな共振が溝部に現れます.現在,この特異なガイド波の挙動について応用検討を始めているところです.

過去の研究内容: 2019-2021